27th
撮影は、前の客席から順次、2階席へと流れ作業で進んだ。といってもスムーズではなくステージではスタッフが「順番です」とマイクで絶叫し、段取りは当然悪く客席を苛立たせた。2000人近くいる全員と数十人単位で撮影をこなすのだからスターも大変だ。
こういうアナログなファンサービスをどこまでプロ意識でこなせるのかの精神力と、スターを間近にしたファンの高揚を眺めた。2階席だったので十分な時間があった。
スターは撮影の合間にファンに笑顔を見せ続け、抜けがけで求める握手にも対応した。すかさずスタッフが声を張りさえぎる。「握手は禁止です!」
・・・禁止、はないよなぁ、せめて、ご遠慮ください、でしょとそのパニックを眺めた。「人数が多いんです!握手は禁止!」と繰り返し叫ぶのは、それほどルール違反をするファンも多い、ということだ。
違反は見事だった。シャッターを切る直前に、スターに抱きつく人。シレッと両肩に手を乗せる人。後ろの人にかぶさってスターの横に平然と並ぶ人。「なにすんのよっ」と突き飛ばす人。真正面からプレゼントを渡し、会話を試みる人。高齢であることを武器に「いたわれ」と、憐みを強要する人。「杖をついて来たのだから」と握手を求める人。その都度、スタッフの「禁止」絶叫の波が会場にうねる。
正月の福袋の取り合いどころではない。ファンの集いのクライマックスは、利用できるものはなりふり構わず利用する欲望の修羅場と化した。
おそらく、冷静なファンなど、似非(えせ)だ。ファンとはこのように自らの欲望に突き動かされるままに行動する人を指し、そのためにスターが辛かろうがしんどかろうが関係ない。
発情・欲望・エゴ。私はファンの3大要素を発見した。人を魅了するとはこういうことだ。理性を放棄させるほど魅了して初めて、利益が上がるビジネスになる。ステージで繰り広げられる修羅場は、ファンイベントよりもよほど刺激的で興奮し面白かった。